TANTO、ムーヴなどの人気の高い軽自動車を中心に、滋賀県全域でダイハツ車の販売・整備を手がける滋賀ダイハツ販売株式会社。1970年以降は販売台数で県内トップを維持するなど、1954年の創業以来約70年にわたり地域の人々の生活を支える同社は、人事制度改革と業務効率を目指し、2021年にカオナビを導入しました。導入の経緯や活用状況について、取締役 管理本部長の平尾香子(ひらお たかこ)様とプロモーショングループ 戦略企画室 デジタルマーケティングマネージャー深田類(ふかだ るい)様、業務支援グループ 本社管理総務マネージャー 嶋原聖子(しまはら しょうこ)様、業務支援グループ本社管理 人事マネージャー山名香織様に聞きました。
*本記事の掲載内容は全て取材時(2022年9月16日)現在の情報に基づいています
紙からスプレッドシートに移行するも、複雑な計算式でPCがフリーズ……
――カオナビを導入するまで、人事業務にどんな課題を抱えていたんですか。
深田様:
当社ではスタッフの役割にきめ細かく対応した評価制度を運用しています。目標管理評価をベースに店舗の売上データに基づく業績評価を加えて評価を出すのですが、紙ベースで回していたので、評価点の計算やその反映にかなりの手間がかかっていました。
平尾様:
当時、半期に一度の集計時期には、評価シートを管理本部のスタッフ総出で電卓片手に計算をしていました。賞与支給額を決めるのが評価結果なのですが、評価の締切日と賞与支給処理日の間はわずか数営業日。一刻も早く評価シートを集めたいところですが、全部署が締め切りを守ってくれるケースは稀です。また、17つの店舗を含め20拠点を構える当社では、各拠点を決まったルートで回る「社内便」で書類のデリバリーをしているので、到着を待つしかありません。ミスが許されない業務にスピードも求められ、その時期は長時間の残業も常態化していたんです。
深田様:
そこで2年前、紙運用からGoogleスプレッドシートでの運用に切り替えてデジタル化を図ったんですが、計算式が複雑過ぎたのか、データを呼び出せずに画面がフリーズすることもしばしば……。しかもシートも1人1枚あるため、項目ひとつ変更するだけでも約350人分のファイルを変更しなければならず、効率化を実感することがほとんどできませんでした。
やはり評価の専用システムが必要だという結論に達し、評価運用ができそうなベンダーにコンタクトして、個別に相談しました。しかし、配属先や等級、役職などに応じて、評価シートが50種類以上に分かれていたからか、ほとんどのベンダーに「この評価制度をそのままシステム上で再現することは難しい」と匙を投げられてしまい……。
そんな中、カオナビは当社の評価制度を再現でき、さらに、以前から要望が出ていた「散在したデータの一元化」や「社員の顔と名前の一致」も実現できるということでした。これしかない、ということで、導入を決めました。
部署総出の「電卓手計算」から解放、書類紛失のリスクもゼロに
――評価シートが50種とは相当な数ですね……! カオナビに変えてみて、いかがでしたか。
平尾様:
劇的に効率化しました。電卓での手計算なしで評価結果が出せるような業務フローを組めたので、評価の集計作業に5人で3日もかかっていたものがほぼゼロになりましたからね。最短でも7日かかっていた社内便頼りのシート回収がリアルタイムにできるようになったのも大きな効果です。また、回収した評価シートが本社に届かず店舗に戻ってしまう、紛失してしまうといったトラブルとも無縁になって、ハラハラさせられることがなくなりました。評価フローの管理もシンプルにできました。等級や役職に応じて表示内容を変える機能を活用し、50種以上の評価シートの内容を1枚のフォーマットにまとめました。きめ細かい評価制度をシンプルに運用できるというのは、タレントマネジメントに特化したシステムならではの効果だと感じます。
評価のスプレッドシートは「1人1ファイル」だったので、ちょっとした確認や修正をするのにも探し出すところから一苦労だったのですが、スマートレビューなら一発で検索できます。また評価プロセスの進捗も一目瞭然なので、遅れている人や店舗には早めに催促できるので、期日に間に合わないということもなくなりました。
山名様:
効率面だけでなく、評価の質向上にも役立っている一面もあると思います。紙運用のころは作業が複雑化しないよう、一般社員の評価シートの閲覧許可は所属店の店長のみとしていましたが、本部長や役員も、一般社員の評価シートを確認できるようにしました。役員が店長を評価する際、一般社員のシートを通じて店長の指導方針が垣間見えたり、役員が間接的に一般社員の働きぶりを見る機会にもつながっています。
月次実施の1on1の記録ツールも、紙からカオナビに変えました。多い人で数十名もの部下を抱える管理職もいるので、そうした社員には特に好評です。工数の削減以外に、いつでも過去履歴を見られる、1on1でしかじっくり話せないようなスタッフの顔をすぐに思い出せるといった効果も出ているようです。
総務、経理、システム担当……複数部署の承認も「ワークフロー」でスムーズに
――申請機能「ワークフロー」もご利用いただいているそうですね。
嶋原様:
2022年8月に全社員にiPadを貸与したことを機に、従来は紙で受け付けていた各種申請をワークフローでデジタル化しました。結婚や出生、扶養の変更をはじめ、通勤経路の申請や変更といった届け出はもちろん、名刺作成や出張旅費の精算、PC等貸与機器の破損報告書など、デジタル化した申請の種類は多岐にわたります。
評価運用と同じく、社内便で毎日届く書類を受け入れたり、承認者に回したりといった作業がなくなり、劇的に効率化しました。承認や確認をする部署は人事、総務、経理、システム担当などさまざまですが、デジタルなら複数部署にわたる場合でもスムーズです。評価シート以上に重要な個人情報が含まれる申請書類もあるので、書類紛失リスクがなくなったことも大きなメリットですね。
カオナビへの移行についてはiPadで申請するよう周知しただけで、使い方について特段レクチャーはしていないのですが、社員からの問い合わせはほとんどありません。「申請書をください」といった電話はまだかかってきますが、iPadで申請するよう案内すれば、それで済んでいますね。記入方法は見ればだいたい分かるようで、記入方法のフォローに時間を取られないのもうれしいです。
深田様:
つい先日、部品センターから「部品の調達申請書もワークフローで回せないか」という相談があったので、さっそく設定してみました。スマートレビューもそうなのですが、カオナビは設定画面も直感的で使いやすいので、こうしたニーズにもすぐ対応できます。
申請先となる本社と店舗が別ロケーションにあるので、デジタル化による工数削減効果は大きいんです。ワークフローの利用対象を拡大して、効率化を進めていきたいですね。
コロナの感染状況把握にも活用。先手を打った応援人員計画が可能に
――新型コロナ対策でもカオナビを活用されているそうですね。
平尾様:
ちょうど導入検討をしていたころから、社内でも感染者が出るようになりました。同じ店舗で複数の感染者や濃厚接触者が出ると運営に支障をきたすので本社や本部で応援人員の手配をするのですが、状況把握のすべは「全店舗に電話で聞く」しかありません。陽性者の数や復帰予定日に加え、濃厚接触や発熱といった「発症予兆」など必要な情報は山ほどあるのに、逐次電話で把握し、メモを取っていくしかありませんでした。本社や本部と各店舗間の情報連携だけでなく、店舗内での情報把握にも苦労していたんです。
そこで、新たに導入することになったカオナビを社内の感染状況を把握するために使うことにしました。データベース機能「プロファイルブック」に新型コロナ罹患状況のシートを作成し、陽性判定や濃厚接触者に該当、あるいは発熱が認められた社員は、その日から毎朝、そのシートに状況を更新してもらうようにしました。
朝、出社したらまずは、プロファイルブックの情報をシート単位で横断的に閲覧できる「シートガレージ」をチェックします。シートの数や内容を見て、陽性者だけでなく発熱や濃厚接触の状況が分かるので、人員が不足しそうな店舗を事前に予測できるようになり、余裕を持って対策を練ることができました。記入内容は一覧で確認できるので、1画面で概況が分かるのが本当に便利でした。シートには保健所からの指示や療養期間を入力する項目も設けたので、いつ復帰するかも一目瞭然で、計画が立てやすくなりました。
人事評価のために導入したシステムが思わぬところで活躍したのは、うれしい誤算でしたね。
日々使うログイン情報や社員旅行のアンケートまで幅広く活用
――コロナの感染状況以外には、どんな情報を管理されているんですか。
山名様:
住所や生年月日、家族の情報、社会保険の情報、緊急連絡先、評価履歴、異動履歴などをプロファイルブックに登録しています。導入前はそれぞれの項目ごとにスプレッドシートを作っていたので、一人の社員のデータを確認するのが大変でしたが、一括で閲覧できるようになってとても便利になりました。
嶋原様:
情報収集にはアンケート機能「ボイスノート」も活用しています。スキルチェックのために、各業務についての自身のスキルレベルを問うアンケートを実施しました。そのほか、新型コロナウイルスのワクチン接種回数もヒアリングしました。デリケートな情報なので苦慮していましたが、匿名回答に対応しているので、安心して調査ができました。管理部としては1回接種済、2回接種済それぞれの割合だけでも把握しておきたかったので重宝しました。
社員旅行の準備で、複数あるテーマパークのうち、どのチケットを取るかの確認にも使いました。従来は、対象者一覧と回答を入力するExcelを作成して各店舗にメールで依頼をしていたので、作業量が多くミスも起こりやすかったのですが、今は回答の進捗もリアルタイムで把握できるので助かっています。
深田様:
人事だけでなく、社員の業務効率化にも活用しています。当社ではカオナビ以外にも数多くのクラウドサービスを使っているので、本人のみ閲覧・編集可能な「ID・パスワード」のシートをつくり、Googleワークスペースをはじめ、勤怠管理システムやチャットツール、タイムカードの打刻システム、サンクスカード、eラーニングなどすべてのログイン情報を集約していつでも確認できるようにしました。
それまでは頻繁に「パスワードを忘れた」という問い合わせ電話が総務にかかっていたのが、ピタリとなくなりました。まあ、カオナビのログイン情報だけは忘れないでいてもらう必要があるんですが……(笑)。
平尾様:
全員の顔写真が見られるのも便利ですね。役員本部長が店舗に行ってもスタッフの顔と名前が一致しないと声かけもできません。以前は役員本部長の巡回時、顔写真入りのリストを作って渡していたんです。カオナビを導入してからは役員本部長が自分で各店舗のメンバーをチェックできるようになりました。役員本部長が自分の名前を呼んでくれる、というのは、ささいなようですがコミュニケーションのひとつであり、重要なことだと思います。
データ分析機能に可能性、使いこなして戦略人事につなげたい
――今後、カオナビを使ってどのようなことを実現していきたいですか。
深田様:
導入1年目は評価運用制度の浸透に注力し、社員の皆もカオナビに慣れてくれたようで、2年目となる今は社員情報を集約してデータの蓄積を進めているところです。ワークフローも、利用開始から間もないながら用途の拡大を進められそうなので、データベースの情報量とリアルタイム性を充実させていきたいと思っています。
山名様:
実は、来期に評価制度のアップデートも予定しています。人事の想いだけを込めるのではなく、評価を受ける側が納得できる制度にしようと、一般社員にもチームに入ってもらって内容を検討しているところです。業績評価の項目も増えるので今より複雑化するとは思うのですが、カオナビは制度に合わせられるシステムなので、設計のやりやすさを活かして皆が満足できる制度をつくり、運用していきたいです。
嶋原様:
また、退職した社員に連絡する機会が多いので、退職者管理オプションの利用も考えています。連絡先の把握はもちろん、退職面談時の情報を記録し、分析することで、離職理由の把握や離職防止の対策にもつなげられそうです。
平尾様:
社員の情報を確認するだけなのに、たくさんのファイルやフォルダを参照することを強いられる状況をなんとかしたい。それは、私が人事の現場にいたころからの悲願でした。以前、他社様の人事部を訪ねたときに、社員番号を入力するだけで全情報を確認できるシステムを初めて見て「これがあればスタッフの苦労が減らせるのに……!」とずっと憧れていたんです。今、カオナビを導入して、ひとつ夢が叶ったような気がします。
カオナビは単なる情報の入れ物ではなく、そのデータを横断的に分析して戦略的な人事配置や採用、人材のスキルアップなどにも活用できるシステムだと思っています。表彰歴や過去の異動履歴を追加したり、適性検査を受けて結果の分析したりと、やりたいことのアイデアはたくさん浮かんでいます。活用方法を相談できる担当の方もついているので、より高度な使い方をマスターして、一人ひとりのスタッフが能力を発揮できる環境づくりに活かしていきたいと思います。
- 設立
- 1954年4月3日
- 資本金
- 1億円
- 社員数
- 353名(嘱託・パート・再雇用・派遣除く、2022年3月現在)
- 事業内容
- ダイハツ車全車種及び各種中古車の販売・整備 部品・各種用品の販売、カーリース、各種保険代理店業務