課題
- 中途採用社員を中心に早期離職の割合が高まっていた
- 対策として1on1を実施し効果が見えたものの、リソース不足に
活用法
- パルスサーベイで社員の健康状態や仕事への満足感を定期的に計測
- 計測結果が悪い、もしくは悪化傾向の社員にフォーカスして面談を実施
- 計測結果をもとに離職防止施策を検討
効果
- 要対応者の絞り込みが可能になり、より必要な面談に時間を使えるようになった
- スポットではなく、サーベイ結果の推移で離職兆候を把握できるようになった
- 人事面談前にサーベイ結果をもとに先回りして対象者の情報収集が可能に
人材派遣を中心に総合人材サービス事業を運営するSGグループ株式会社様は、2021年にカオナビを導入。人事情報の一元化や評価業務・各種社内申請に関する業務の効率化を目的として運用しています。また2023年からは、従業員の満足度や健康状態を短期間・高頻度で調査するパルスサーベイの機能を活用し、離職防止施策を推進しています。
パルスサーベイの活用事例や担当者目線で感じる可能性について、コーポレート部 グループ人事課の北田かおり様にお話を伺いました。
※本記事は2023年10月25日開催のユーザー会の内容をもとに構成しています。掲載内容は全て当日時点の情報となります。
カオナビ導入で当初の問題を解決。しかし問題は他にも……
––カオナビを導入したそもそもの背景を教えてください。
カオナビを導入する以前、当社の人事には大きく分けて3つの問題がありました。
1つは「人事情報の散在」です。カオナビ導入以前はコーポレート機能を持つそれぞれの課が独自に人事情報を管理していました。情報にアップデートがあれば各課で対応するのが当たり前で、必要な情報もすぐ集まらない。そのような状態が当たり前になっていたんです。
2つ目は「人事評価業務の煩雑化」です。元々は評価シートをExcelで管理していましたが、人事評価の時期になると従業員それぞれが作ったExcelデータを上長がファイリングして、パスワードをかけて、人事課に送って……と、とにかく工数が煩雑になっていました。
最後の3つ目は「申請の対応工数」。当社グループは全国に拠点を構えている一方で、コーポレート部門は東京のオフィスに集約されています。そのため、入社手続きの資料を各拠点に郵送する際に、手続きに不備があると資料が期日に届かないなど、業務に支障をきたすケースもありました。
これらの問題を解決する手段として、タレントマネジメントシステムを導入する流れになりました。
––その中でカオナビ導入の決め手はどこにあったのでしょうか?
カオナビはまず何よりUIが分かりやすく、感覚的に使いやすい。フォーマットの設計もクリック&ドラッグで誰でもすぐに操作を覚えられる点が魅力的でした。
加えて、営業担当の方が丁寧にフォローしてくださった点もポイントです。システムの導入はどうしても費用対効果で検討する必要があるのですが、その際にも丁寧な説明資料でプランや他社比較の説明をしていただき、この方々なら安心できると思えました。
––––実際にカオナビを運用して当初の問題はクリアできたのでしょうか?
カオナビを導入することで、先ほどお話した3つの問題は解決することができました。ただ、当社が抱える問題はそれだけではなく、中途社員の早期離職も大きな問題となっていたのです。さまざまな離職防止施策を検討する中でたどり着いたのが、カオナビの機能の一つであるパルスサーベイの運用でした。
“パルスサーベイ”からはじめる効率的な離職防止施策
––パルスサーベイの運用に至るまでの経緯を教えてください。
まず離職防止施策として実施したのが、人事と入社間もない社員による1on1です。当社では「雑談」「相談」の頭文字をとって「ざっそうタイム」と呼んでいます。東京にいる人事が通常の業務の中で全国拠点にいる社員の状況を把握することは難しいため、人事自ら能動的に社員の情報をキャッチするために始めた施策です。
成果としては、1on1の中で社員の感じる不満や疑問を把握できたことはもちろん、必要に応じて結果を直属上司にフィードバックすることでコミュニケーションのすれ違い解消や事業運営の参考につながるなど、さまざまな効果を実感できました。
––ただ、全ての対象者と1on1をするのは時間や労力がかかりそうですが……。
おっしゃる通りで、採用を強化していたということもあり、運用間もなくして人事担当者のリソース不足に直面しました。そこでもっと気軽に社員の情報を集める手段として実施したのが、アンケート形式で従業員の満足度や健康状態を定期的に測定するパルスサーベイです。
当社の場合、開始当初は「新卒社員」「中途社員」「長期休職復帰後の社員」「公募制度を利用した社員」を対象に、健康面ややりがいなど計10個のヒアリング項目を設定。加えて自由記述とざっそうタイムの希望有無も記入できるようにすることで、本当に面談を必要とする社員が自発的にヘルプサインを出しやすくなる設計を意識しました。
いざというとき「人事を頼ってもいい」と思える環境が生まれた
––カオナビでパルスサーベイを運用してみてどのようなメリットを感じましたか?
人事目線では3つのメリットを実感しています。
まず一つは「メンテナンスが不要」な点です。一度パルスサーベイの対象者や期間を設定すれば、あとはシステムが対象者を割り出して自動でパルスサーベイを送信してくれるため、実施のたびに設定したり、対象者を整理したりという手間がなくなりました。
二つ目は「自動メール送信機能」。パルスサーベイの送信だけでなく、回答期日直前のリマインドメールも自動で送信できる仕組みとなっており、回答率の向上につながっています。
そして最後は「現場サイドが面談希望を出しやすい」こと。サーベイ上のチェックマーク項目をクリックするだけなので、面談希望に対する心理的ハードルを下げることができますし、人事側としても本当に面談が必要な人が誰かを一目で把握できるため、非常に効果的だと感じています。
––パルスサーベイ実施後の効果や社内の反応についてはいかがでしょうか。
まず、毎月20名から30名近く実施していた面談が2名程度になりました。その分の時間で、本人からのヘルプがなくとも危険信号が出始めている社員に対し、こちらから面談を実施する動きも検討中です。
そうすることで「本人が気づいている不調」に加え、「気づかないうちに進んでいる不調」にも対応できる、質の高い面談を実現できると考えています。
実施直後は社員から懐疑的な声や、目的が分からないといった声も上げられたのですが、実際に何度か体験して慣れていく中で、「いざとなれば人事を頼ればいい」と思える環境が生まれたと感じています。
パルスサーベイの結果から、離職防止の次なる一手を考える
––離職防止に向けてパルスサーベイの実施結果をどのように活用していますか?
パルスサーベイはただ実施するだけでは意味がなく、その結果を受けてどのようにアクションするかが重要だと考えています。
まず、パルスサーベイは定期的に集めた回答結果を推移として確認できます。そこで、個人の推移変化を追うのはもちろん、部署全体でも推移を確認することで、広い視野で組織の変化を把握することが可能になります。
そして次のステップとして、設問確認を実施します。例えば「自身の業務に対する達成感」に加えて「自身の成長実感」に関する項目で、ネガティブな回答が数カ月連続している回答者がいたとすれば、この人は言うまでもなく離職手前の状況と判断できます。
また、各設問項目でネガティブな回答をしている社員をシステムで絞り込み、要対応者を抽出する個別確認も実施しています。
––人事面談の際にもパルスサーベイを活用しているとのことですが。
実施結果から要対応者と判断した社員に対しては都度人事面談を実施しており、その際もパルスサーベイの結果が役立ちます。直近のデータを参照すれば、どのタイミングで回答結果が悪化したのか、部署全体ではその時期に繁忙期だったのかどうかなど、面談する前から情報を先回りして把握できるようになりました。
こうすることで、面談時に本人の背景からヒアリングするのではなく、クリティカルな質問から面談を進められるため、限られた面談の時間を効率的に運用できるようになりました。
また、面談の回答結果をプロファイルブックに蓄積しておける点も、カオナビでパルスサーベイを実施する大きなメリットだと感じます。
パルスサーベイは組織にとっての“健康診断”
––今後の展望を教えてください。
限られた対象の社員に対して実施したパルスサーベイで一定の効果が見られたため、2023年の9月からは対象を全社員に広げています。
まだまだこれから、という状況ではありますが回答率は8割近くで、多くの社員に参加してもらえています。ただ、今後も継続して回答してもらうためには、広報活動を通してパルスサーベイの価値を引き続き啓蒙していく必要もあると感じますね。
個人的に、パルスサーベイは組織にとっての“健康診断”だと思っています。定期的に診断をして、すでに悪化しているのであれば、健康になるための“処方箋”として人事施策を実施し、経過を観察していく。健康診断は私たち個人が当たり前にやっていることなのですから、組織でも同様にパルスサーベイで健康状態を図ることが重要だと考えています。
今は離職防止のための一つの手段ですが、パルスサーベイで得た情報をベースに、私たち人事が真剣にコミットすることで、当社グループで働く社員一人ひとりにとってのマイナス要素を減らし、社員の誰もが健康で満足して働ける環境をつくりたいと思っています。
また、私はバックオフィス業務なので直接事業収益を上げる業務ではありませんが、組織の健康状態を常に維持することで事業側と同じ目線で仕事ができるようにしていきたいです。
- 設立:
- 2009年5月(グループ中核・株式会社サウンズグッドの設立年月)
- 従業員数:
- グループ連結447名(2023年11月時点)
- 事業内容:
- 人材派遣を中心とした総合人材サービス事業