「安心・安全・健康のテーマパーク」を目指し、生命保険、損害保険、介護・シニア事業など幅広い事業を展開するSOMPOホールディングス。主要事業領域である保険事業の中でも生命保険事業を担うSOMPOひまわり生命保険株式会社では、「自ら考え行動できる、自律的な社員」の育成のためにカオナビを導入しました。詳しい導入経緯や活用状況について、詳しい導入経緯や活用状況について、人財開発部 企画グループ 課長代理の落合加奈様、同課長代理の池田大輔様、同課長代理の吉田志帆様に伺いました。
*本記事は2022年7月28日開催のカオナビ主催セミナーの講演内容を基に構成しています。掲載内容は全てセミナー当日時点の情報となります
自社独自の制度を落とし込める人材管理システムを導入
――2021年3月にカオナビを導入いただきました。どんな背景があったのでしょうか。
池田様:
当社では、社員が使命感とやりがいを持って自ら考え、行動できる「自律型社員」として成長できる取り組みを進めています。一人ひとりが自分の社会や組織における存在意義を捉え、実施を宣言する「MYパーパス」の策定や、D&I(ダイバーシティアンドインクルージョン、多様性の包含)推進に焦点を当てた施策などです。そこで課題だったのが、グループ共通で導入している人材管理システムでした。
方針の大綱はSOMPOグループ共通のものですが、評価制度などの細かい施策には当社固有の取り組みも少なくありません。そうした独自の要素を逐一SOMPOグループ全体で利用する人材管理システムに落とし込むのは難しい状況にあります。とはいえ、評価業務はExcelや紙ではなくシステムで運用したい、というニーズがありました。
落合様:
評価のほか、D&I推進の側面でも人材管理システムの必要性が高まっていました。多様性包含のスタート地点は「お互いを知ること」だと考えると、社員の価値観や経験、強み、スキルなどを従業員に共有する必要があります。それにはやはり、なんらかのシステムが必要です。人事だけでなく従業員も活用できるよう、年齢やITリテラシーを問わず、誰にでも使いやすい点を特に重視してシステム選定をしました。
吉田様:
そのほか、支社・オフィスが全国に約85と多拠点で、リモートワークの社員もいる中でのコミュニケーション活性という目的もありました。2021年に「どこでも本社勤務制度」というフルリモートの働き方が設けられたのですが、福島在住で人財開発部所属の私はまさにその対象です。働いている場所を問わずどんな仲間が働いているかが分かるしくみは、いつでも・どこでも働ける環境づくりに必要だろう、という目的もありました。
落合様:
導入の決め手はいくつかありますが、主にシステムの柔軟性と使いやすさです。他社に「再現できない」と言われた評価フローやシートを再現できたり、きめ細かい権限設計ができる点は一番の魅力でしたね。使いやすさの面では、従業員側の画面操作はもちろん、設定画面もドラッグアンドドロップがベースで簡単なので、人事担当で設定が自己完結できることもポイントでした。
「こんな使い方をしたかった!」 思い通りの評価業務運用が可能に
――導入して2カ月後には早速、運用を開始されたそうですね。
落合様:
毎年、ゴールデンウィーク明けから新年度の目標設定がスタートするので、急いでカオナビの設定を進めました。
従来のシステムでは仕様設定を外部に委託していたので、変えたいところがあってもタイムリーに反映させるのが難しかったんですが、カオナビは設定したらすぐに実装した画面を確認できます。評価ワークフロー機能「スマートレビューで」、前のシステムとなるべく同じ配置を目指してシートの設計をしていたので、思ったものと違ったときもすぐシステムを直せるのがうれしかったですね。
導入に当たってマニュアルも準備しましたが、ひな形があったのでさほど作業せずに済みました。以前のシートとほぼ同じレイアウトに仕上げられたので「どうやって入力したらよいか」といった問い合わせもさほどありませんでした。3000人近いメンバーが使うので、導入時のフォローのリソースが想定より抑えられたのは助かりました。
池田様:
人材管理システムの個社導入は大変な面もあるのですが、きめ細かな制度を目指すと、グループの枠組みと異なる部分は必ず出てきます。直属でない課長へのシート閲覧権限の付与、目標記入欄への前年データ取り込み、記入例の表示、非表示項目の設定など、「こんな使い方をしたかった」と思う仕様を盛り込めたおかげで、狙い通りに評価運用ができている手応えがありますね。
落合様:
スマートレビューは評価運用のほか、保有資格の把握にも使っています。
当社は保険会社なので取得必須・推奨の資格がかなり多く、一番少ない人でも10以上あるので、一元管理のニーズが高かったんです。資格取得の証跡となる合格証のPDF添付もできるので、申請から承諾、蓄積までカオナビで完結でき、便利になりました。現場からも、面談の際に「ステップアップするために、次はこの資格にチャレンジしようか」などとアドバイスもしやすくなったと好評です。
このほか、労働契約書などの契約社員との各種人事関連書類の手交にも活用しています。やりとりの手軽さだけでなく、物理的な保管場所の圧縮にもなっています。
経験者を探して生の声をヒアリングできる。人事制度活用の促進にも効果が
――データベース機能「プロファイルブック」では、保有資格の情報を管理しているのですか。
落合様:
もちろん、資格情報も蓄積していますが、情報カテゴリー(シート)は4種類あります。名前や所属先などの基本情報、異動履歴、担当業務、業務関連情報、パーソナル情報とさまざまな情報を集め、全社に公開しています。
「業務関連情報」シートには、担当業務のほか「MYパーパス」や自分の強み、社内表彰歴などの業務関連の情報を、「パーソナル情報」には趣味や特技のほか、居住経験のある地域や、ライフイベントに応じた働き方(育児や介護を理由とした時短勤務や週4勤務、どこでも本社勤務制度、シフト勤務など)の活用経験があればチェックを入れられるようにしています。
社員の間では、制度の活用経験やエリアで検索し「どこでも本社勤務制度に興味があります。実際の働き方など教えてください」といった情報収集にも役立てているようです。
池田様:
社員が自発的に情報を取りやすい環境ができ、制度利用促進にも役立っているように思います。
人財開発部としては、いつでも・どこでも働ける環境づくりに向けさまざまな人事制度を用意しているので、ニーズがあればぜひ利用してほしい。ただ、私たちは当事者ではないので、検討者が一番聞きたい「実際、どうなの?」という質問には答えられない歯がゆさがあります。その点、制度の利用経験者を見つけられる環境は、本人が納得して制度利用をするために非常に有意義だと感じています。
吉田様:
私もシフト勤務制度の利用経験があるので、実際に問い合わせを受けたことがあります。特に女性社員は、産育休や時短など利用を検討する制度が多いからか、制度の経験者に話を聞いてみたいと感じる機会をよく見かけます。
また、使い方は違うのですが、私自身もかなりプロファイルブックを活用しています。
入社以来15年間、ずっと福島支社で事務と営業を担当していたのですが、2022年の4月に人財開発部に異動になりました。部署の拠点は東京ですが、月1回程度の出社先は福島支社のオフィスで、基本的には自宅で仕事をしています。これまで本社部門の他部署の方と接点を持つ機会がなかったので、リモートでの会議でいきなり顔合わせという方も珍しくありません。配属当初、初めましての方とウェブ会議をする前には、まずプロファイルブックを見てその人の顔を確認してから臨んでいました。人となりやお顔が分かっているだけでけっこう緊張がほぐれるもので、重宝しています。
落合様:
プロファイルブックでは、月に1、2回実施する1on1の面談記録も管理できるようにしています。
1on1は以前から実施していたんですが、記録媒体を特に指定していなかったので、メモ帳に書いたりExcelで管理したり、中には何も記録をつけてないマネージャーもいました。せっかく実施していても、記録を取っていないのはもったいないということで、カオナビに面談履歴を残しています。手書きのノートやExcelファイルだと誰かに見られたりする可能性もあります。本人と上長だけが見られるよう、面談履歴をセキュアに残せるようになりました。
カオナビでの情報公開は「D&I推進の一環」。丁寧な説明で理解を得る
――多くの情報を全社公開されているんですね。個人情報に当たるものもありますが、社員の皆さんの抵抗はありませんでしたか?
落合様:
はい。当初は社員から「なぜ個人情報を開示しなければいけないの?」といった意見も寄せられましたし、そうなる想定もしていたので、社員の理解を得られるよう、いろいろと工夫をしました。
まずはじめに、カオナビでの情報公開はD&I推進の一環である旨を説明し、全社員向けの座談会を社長が開いたり、社長・役員やマネージャー層が率先して情報入力を実施したことで、個人情報を公開する意味の理解が進んでいきました。さらに、カオナビ活用に向けた部署横断のプロジェクトを立ち上げて、参加者がインフルエンサーとして社内SNSで活用事例を発信するようにしました。その甲斐あって、顔写真も含め、9割以上の社員が情報を入力してくれています。
池田様:
当社にはさまざまな特性や経歴を持つ社員がいます。中途入社で、前職で何社も経験している人もいれば、社内でも転勤がない職種の人も少なくありません。となると、異動欄ひとつとっても、人によって情報量にかなり差が出てきます。
そのため、経歴や部署といった最低限の情報だけでなく、なるべく全員に、パーソナルな情報も入れてほしいんです。コミュニケーションなんて必要ない、と思っていても、同じ趣味や出身地の人なら、興味を持つ可能性は高まると考えているからです。研修や会議で一度会っただけでも、共通点があれば雑談に発展するかもしれない。多様な社員が接点を持つことで生まれる刺激やアイデアが、社員や企業の成長を促すドライバーになるはず。そうした想いもあって、各方面に丁寧に説明を重ねました。
――カオナビが社員同士の接点となるシーンが徐々に増えているんですね。なにか定量的な効果は出ていますか。
落合様:
数値化は難しいのですが、全社員の9割が情報を自ら入力し、6割がMYパーパスを策定し、公開していて、その浸透に少なからず役立っているとみています。また、従業員のエンゲージメント調査でも、「職場に信頼できる人がいる」「1人の人間としての気遣い」の数値が大きく向上するなど、経年のスコアに改善傾向が見られています。
社員からも、「こんなにすごい能力を持った人が社内にたくさんいると初めて知って刺激になった」といった声が上がっています。
いつでも・どこでも働ける環境で、一人ひとりの成長に役立てたい
――今後、カオナビでどんなことをしていきたいですか。
落合様:
「この人と話してみたい」「こんな人がいるんだ!」という発見が刺激になると思うので、社員にはもっと、部署を超えたコミュニケーションに使ってほしいです。カオナビを使ってこの人と話してみたいとか、その人とコミュニケーションをとってキャリアを考えるとか、自分の業務に活かしてもらうツールにできればと思っています。また、今後カオナビにデータがそろっていけば、情報共有だけでなく分析にも使えるのではと考えています。一人ひとりの成長に生きるデータ分析ができればと思います。
吉田様:
メンター制度のような活用方法を検討しています。プロファイルブックの登録内容を確認して積極的に聞きに行ける人もいる一方で、「忙しいだろうから」「迷惑かも……」と、聞きにくいと思っている人もいると感じています。その解消のためにも、「私に聞いてもいいよ!」という表示をすることで、お互いに話を聞きやすい状況や風土を創り出していきたいです。目に見える範囲にはいなくても、カオナビを見れば、社内にはその部署への経験を教わりたい、制度活用の経験の話を聞いてみたい人がいることが分かって、その人を探して話を聞くことができる。そうした、いつでも、どこからでもお互いをサポートできるような活用ができればと思っています。
池田様:
自己研鑽という観点では、いま「同僚や先輩がどんな取り組みをしているのか分からない」という声が上がっているので、学びに関する項目をつくって情報共有ができないかと考えています。
学びと一言で言っても、業務に直結する金融系の資格を目指す人もいれば、プログラミングを勉強している人もいるかもしれません。勉強法を相談する以外にも、何を目指して、なぜ学んでいるのかを問うてみるなど、コミュニケーションが生まれるきっかけになると思っています。
こうした話に限らず、「いつでも・どこでも働ける」という全社方針を進める上で、クラウドベースの人材管理システムは重要なツールだと感じています。勤務地や業務内容が分かれていても、お互いの魅力を知り接点を持てる環境づくりに向け、今後も活用促進していきたいと思います。
- 設立:
- 1981年7月
- 資本金:
- 172億5000 万円
- 社員数:
- 2706名(2021年度末日時点)
- 事業内容:
- 生命保険業