超高齢社会を迎える日本において、介護サービスのニーズはますます高まるばかり。一方で、介護業界では従事者の高い離職率と人材不足が大きな課題に。行政レベルで介護サービス事業者に対する従事者への処遇改善の取り組みが行われています。今回ご紹介する兵庫県神戸市の介護サービス事業者、医療法人社団 せんだん会では、「カオナビ」を活用し、職員の処遇改善につながる人事制度の整備を進めています。
医療法人社団 せんだん会について
「包括地域ケア」の実践で、地域に質の高い老後の安心を提供
——医療法人社団 せんだん会様の事業についてお聞かせください。
白井 恒様(以下、白井様): 当会では、神戸市兵庫区に創設した都市型介護老人保健施設「兵庫みどり苑」を中心に、同地域でデイケア、居宅介護支援センター、訪問リハビリなどの介護サービスを展開しています。近年では、在宅介護を支援するクリニックを設置するなど、地域における介護サービスの充実に努めています。
岩田泰彦様(以下、岩田様): 介護業界では、当会のように地域密着で展開する介護サービスを「地域包括ケアシステム」と呼んでいます。また、行政では「地域包括ケアシステム」への注力を今後の介護福祉政策の柱としており、その担い手として当会のような中小規模の事業者にも期待が寄せられているのです。
カオナビ導入の背景
職員のキャリアパスを作り、評価の軸を策定したい
——介護業界が抱える課題にはどのようなものがありますか?
白井様:人材不足が大きな課題です。担い手の絶対数が不足していることに対応するのはもちろん、平均15~17%に上る高い離職率を改善する必要があります。
現在、不本意なことに介護職には「低賃金」「きつい」というネガティブなイメージが先行していますが、本来は高度な専門スキルを求められるスペシャリストの仕事です。それゆえ、当会では、職員の業務効率化を図り、適切な収入も得られる枠組みをつくることに取り組んでいます。そのことで介護の仕事に誇りをもって向き合える労働環境の実現を目指しています。
岩田様:介護サービスは一般的な事業と異なり、「成果」という概念では評価を測れません。そのせいか、業界的に評価制度があいまいであったり、そもそもスキルの標準化が遅れています。
そのため、まずはキャリアに応じたスキルレベルを体系化し、評価の軸を定める必要があります。明確な評価とキャリアパスの策定は、キャリアに応じた給与査定はもちろん、ES(従業員満足)の向上にもつながります。職員のキャリアアップが介護サービスの質向上につながり、最終的には入居者の皆様のQOL(クオリティオブライフ)の向上にも貢献するものと考えています。
カオナビ導入の経緯
多忙な現場に見合った、効率的なシステムを導入したかった
——評価とキャリアパスの策定に、どうして「カオナビ」を必要とされたのでしょう?
岩田様:処遇改善のための介護スキルの体系化や、スキルチェックシートの作成、そしてMBO(目標管理)による評価制度の採用も「カオナビ」導入以前から行なっています。ですが、それらを実際に現場で運用するには、あまりにも現場は多忙なのです。
白井様:介護職の仕事には、入居者への介護サービスに加え、実施した介護サービスを全入居者分記録し、介護報酬の申請書類を作成する仕事もあります。特に“プレイングマネージャー”として働く主任格以上の管理的業務を担う職員は、他にもたくさんの書類を作成する必要があるため、現場に評価業務の負担を求めることができませんでした。
岩田様:そこで人事評価や人材活用に関する業務を効率化できて現場が着実に運用できる「カオナビ」の導入を決めました。さらに現在では、書類作成の業務を効率化する管理システムの導入を並行して進めています。
導入の決め手
誰でも簡単に使えて安定感のある「カオナビ」だからこそ“理想”を追える
——数ある人材管理システムの中でも、なぜ「カオナビ」を導入されたのでしょうか。
岩田様:評価運用とスキルレベルの体系化とやりたいことは明確でしたので、WEB検索で選んだ人材管理システムを7つほど検討しました。その中で、完成度が高く、安定感と扱いやすさを最も感じた「カオナビ」を選びました。
白井様:「カオナビ」にはカスタマイズの柔軟性もあり、私たちの理想を実現できると思えました。何より介護職員も使いこなせる簡単さがいいですね。さらに来年度には介護職の現場にもタブレット端末を設置する予定です。そのため、書類作成のペーパーレス化のほか、「カオナビ」による評価作業(SMART REVIEW)や社員情報の閲覧(PROFILE BOOK)などの現場活用も検討しています。
「カオナビ」の活用イメージ
MBOを適切に運用して離職率を下げたい
——「カオナビ」でどのように評価を運用していく予定でしょうか?
岩田様:適切な評価運用によって、離職率の低下につなげたいと考えています。現在はMBOこそ採用していますが、現場の忙しさもあり「とりあえずやっている」状態に過ぎず、理想的な運用には至っていません。そのため、「カオナビ」による評価運用で、上司と部下が必要なコミュニケーションを取り、職員のモチベーションアップにつながる納得感のある評価を行いたいですね。介護の仕事は精神的にハードな局面もあります。悩みや辛さを抱えた職員が何も言わず去っていくのではなく、風通しのいい職場環境を作っていきたいですね。
職員の介護スキルを「見える化」してサービスの質を高める
——介護スキルは「カオナビ」上でどのように管理される予定ですか?
岩田様:顔写真に紐づけて職員の情報を登録できるPROFILE BOOKに職員のスキルや研修履歴、資格情報なども登録して一元管理しようと考えています。そうやって職員の介護スキルが「見える化」されることで、経営サイドも「どういうスキルをもった人材が必要なのか」を把握でき、人材獲得や育成のためのプランも立てられます。それに職員のスキルを「見える化」できれば、入居者一人ひとりに合ったケアプランを「人材」の観点から考えることができ、サービスクオリティの向上につなげられると考えています。
今後について
介護に携わる人に自信と誇りを与えるロールモデルとなりたい
——介護業界の処遇改善に、「カオナビ」が貢献できる可能性を感じられました。今後の計画の発展を期待しています。
白井様:「カオナビ」を使った評価運用と介護職のスキルの「見える化」によって、職員に「介護のスペシャリスト」としての自覚と自信を持って欲しいですね。そして、世間一般の方にも「介護の仕事=高スキルの仕事」として認識してもらうことで、介護職の地位向上にもつなげたいと考えています。そういう地道な取り組みが、介護職を目指す人の背中を押し、介護職の収入アップにもつながっていくのだと期待しています。私たちの「カオナビ」活用が、介護事業の課題解決におけるロールモデルとなれるよう頑張っていきます。
- 設立
- 2002年4月
- 資本金
- 6500万円
- 職員数
- 124名(うち非常勤23名)※2018年10月1日現在
- 事業概要
- 兵庫県神戸市兵庫区を中心に、都市型介護老人保健施設のほか、デイケア、居宅介護支援センター、訪問リハビリなど複数の介護サービス事業を展開。