SHIBUYA109を中心とするショッピングセンターを運営していた東急商業開発株式会社と、たまプラーザ東急SCを中心に東急線沿線においてショッピングセンターを運営していた株式会社東急マーチャンダイジングアンドマネージメントが合併し、2006年4月に発足した同社。「109ブランドイメージ」を伝えるショッピングセンターや東急線沿線をはじめ地元に密着したショッピングセンターを各地で展開している。
今回、人事制度を一新するタイミングでカオナビを導入した経緯と、新組織体制をスピーディーに確立したポイントについて、人事部マネジャーの新出氏に伺った。
東急モールズデベロップメントが行う組織改革とは?
今までの体制を一新する人事制度の改定。 縦割りの組織体制から脱却し、フラットでスピード感のある組織運営へ
109ブランドをはじめ、全国で商業施設を運営する同社。不動産業界の先鋭的存在として、流通・ファッション・アパレル・飲食といった世の中の流れに敏感に反応し、スピード感をもって施設の企画・開発・運営に反映させ、街のインフラとして発展してきた。一方で、組織は、創業からの歴史を汲んだ、どちらかというと縦割りの組織体制で運用されていたという。「総支配人」「副総支配人」「各担当支配人」「チーフ」「スタッフ」という様に、様々な役職が置かれ、ヒエラルキーが出来上がっていた。こうして複雑化した役職は、外部からはもちろん、社内においても実態がわかりづらい状態になっていたという。
そこで、組織をフラット化し、よりスピード感をもって先進的な商業施設を運営していくべく、2012年3月に大きな人事制度の改定が行われた。新しい制度のメインテーマは、「プロフェッショナル人材の育成」である。今までのように、社内の役職を指標として縦割りの中で昇進を目指すのではなく、商業施設を運営していく上で全職務において各々がプロフェッショナルとなり、より高いパフォーマンスを発揮する。SC運営スタッフも、広報担当も、施設管理者も、経理担当も、全員がプロフェッショナルとして施設の運営に携わっていく。今までの役職は「総支配人・部長」を除き全て廃止、総支配人以下の社員は全てフラットな状態となった。縦の昇進という指標が撤廃されたことで、一つの現場、職務にずっと同じ社員が在籍し、凝り固まっていた組織の在り方も見直されることとなる。若い現場社員には、なるべくたくさんの現場や職務を経験してもらい、どの現場においても通用するようなスキルを磨いてもらう。こうして、全員がプロフェッショナルという組織体制のもと、今後も最先端の商業施設として発展していく考えだ。
新しい人事制度では、具体的にどのような施策を取り入れたのか?
実務のプロフェッショナル度が処遇を決める、「資格等級制度」を導入。
役職が廃止されたことにより、社員の成長尺度を測る新しい制度が必要となった。そこで設けられたのが、「資格等級制度」だ。これは、各社員の実務のプロフェッショナル度を測りその資格等級により処遇を決定する、というもの。当然、初の試みであるため、人事部では「どのように実務のプロフェッショナル度を測るか」「その後どのように評価制度に取り入れていくか」といった点が議論された。そこで、職務内容に関する自身の業務レベルを、社員が直接回答する形式の「キャリア棚卸シート」を作成し、実務実態調査を行うこととなった。
テスト的に行われた第1回目の調査では、人事部の作成した棚卸シートが活用された。社員はそれぞれ「基礎行動」「MD」「販促」「総務・施設管理」「SC経理」「本社スタッフ」など、多様な職務において、「何がどこまで出来る」といった風に点数分けされた項目から自身の業務レベルに合致する項を選択する。そして、合計点数により実務のプロフェッショナル度を測るというものだ。しかし、項目内容にしろ、点数分けにしろ、正解があるわけではない。今後何度も調査を繰り返しながら、より現場の実態に近い調査が行えるよう、項目内容をブラッシュアップしていく予定だ。そうして調査の精度を高めていくことで、ゆくゆくは棚卸結果を社員の評価といった人事制度にも反映させていきたいと考えている。
組織改革を行う上で、どのような問題意識をもたれていたか?
多様な人事情報は、バラバラではなくリンクすることで初めて機能する。 更には経営陣にもきちんと共有する仕組み作りが急務。
人事部の新出氏によると、いざ人事制度が改定され、ジョブローテーションや社員の異動を検討し始めた際に、人事情報の在り方に関して改めて課題感を感じたという。というのも、そもそも人事情報、社員の評価・昇格・研修履歴などの詳細情報はバラバラに管理されており、必要になった時すぐに情報が出揃わない状態だった。
例えば、1人の社員の異動について検討する際に、評価情報、職務内容、所属情報が必要になった。そうするとまずはそれぞれのデータは誰がどこで管理しているかを探すところから始まる。やっと管理している担当者が発覚したが、今度はその担当者が社内のどこにいるかがわからない。居場所は分かったが、担当者は終日不在で肝心のデータの場所がわからない。部署内の他の社員に確認したところ、データは担当者が個別で管理しているもので、共有されていないらしい…といった具合に、いざという時に情報を有効活用出来ない状態だったという。
縦割りの組織を一新したことで、経営層がきちんと現場社員の情報を把握していることは必要不可欠となった。しかし、人事部ですら情報を上手く活用出来ていない状況では、経営層への共有に関してもしっかりサポート出来ないのではないか。そもそも、経営層が社員の情報をきちんと把握出来ていない状態で、ジョブローテーションや異動の決定を下すのは難しいのではないか。せっかく組織をフラット化したところで、このままでは組織運営のスピードを上げることは出来ない。どうにか、これらの情報をまとめて管理出来るツールはないだろうか。この問題意識が、カオナビ導入のきっかけとなった。
カオナビを導入したポイントとは?
シンプルで使いやすいこと。自由自在に新しい制度に対応出来ること。 経営層、人事部双方のニーズを満たすツールが必要だった。
新しい人事制度の運用に伴い、先に挙げたように多様な人事情報を有効活用するべく、一元管理出来るツールとして、人事システムの導入を検討することになった。せっかくシステムを導入するのであれば、経営層自らが操作可能で、社員情報を把握出来るようなシステムであることが望まれた。というのも、情報の一元管理という実務的な要素の一方で、経営陣が現場社員の情報を把握出来なくなっているという課題が浮き彫りになったからである。
社長自身も、徐々に社員との距離が離れ、現場が見えなくなってきていること、コミュニケーションが薄れてきていることに課題感を抱いていたという。今より社員数が少ないころには、全ての社員の情報は把握出来ていたし、何かあればすぐに声掛けできる状態であったが、社員数の増加、新しい商業施設オープンなどにより、社長、経営陣からは現場の状況がつかみづらい状態に。何らかの方法で社員の情報を把握できるツールが欲しいと考えていた。普段社内システムをあまり使わない経営陣が、自ら使いこなすためには、シンプルなインターフェイスで、操作が簡単なシステムであることは検討材料として重要なポイントだった。また、人事部としては、新しい人事制度を運用していく中で、制度自体を日々ブラッシュアップしていく考えがあったため、項目の変更が自由に行えるなど、実務面における利便性も同じく重要なポイントだった。
カオナビの、「機能はあくまでシンプルに、直観的で使いやすい」というコンセプトと、シートの項目やレイアウトなどが自由に設定出来ること、細かい変更や項目の追加に関しても臨機応変に対応出来ること、修正や編集に時間がかからず、すぐに行えること、といった機能の利便性が、求めるシステムのイメージと合致したことが、導入の決め手となった。
実際に、カオナビはどのようなシーンで活用されているのか?
この人は誰で、どこにいて、何が出来るのか。 人材情報を検索し、ピックアップし、ひとりひとりをきちんと把握する。
人事制度の改定、運用に伴い、今までの組織の在り方や制度設計が次々と見直され始めた。人事部では、新しい制度をうまく運用していくために、人事制度に対する社員の本音をヒアリングするべく、カオナビの「VoiceNote」機能を使った異例のアンケートが実施された。例えば、現在の人事制度に対してどのように感じているか、制度には満足しているか、もしくは今後どのような人事制度の導入を望んでいるかといった制度そのものに関する内容から、現在の福利厚生は実際どれくらい浸透していて、きちんと活用されているのか、または給与明細の見方をどれくらい理解しているか、といった項目まで、普段はあまり現場社員の本音をピックアップ出来ないような内容の調査票を作成し、アンケートを実施した。これにより、人事制度に関して社員がどう感じ、何を期待しているのかを探ることが出来、制度のブラッシュアップが実現していく。
また、新たに導入されたキャリア棚卸シートに関しても、今後調査の回数を重ねるごとに毎年の棚卸結果をカオナビ上に蓄積し、社員の成長が可視化できるような運用を目指している。そして、このように集めた情報は、カオナビ上で共有出来る仕組みが出来上がりつつある。それにより、今まで社員の情報を把握できていなかった経営陣も、自らカオナビにアクセスし、どこに誰がいるか、誰が何を出来るか、どのような考えがあるのか、といった情報をいち早くピックアップ出来るようになった。例えば、役員の担当変更があった際には、新しい担当組織のメンバーの情報、現状を役員自らが事前に確認し、現場での声掛けなど、マネジメントに活かされている。
また、グループ合同の幹部層育成セミナーが行われた際には、担当役員はカオナビ上でセミナーに参加させる社員を抜擢し、リストに起こして管理している。誰が出席するかを他の役員が確認したい時にも、同じ情報を簡単に共有することが出来るため、検索や説明の手間が省けている。
このように、経営陣自らが直接人材情報をピックアップするようになったことで、情報収集の重要性は格段に増してきた。以前は、更新頻度が少なかった社員の資格情報や、毎年の評価履歴、異動履歴をはじめ、些細な情報もすべて収集し、最新の情報としてカオナビ上で一元管理することで、ひとりひとりの個性・能力を正確に把握し、今まで以上に適材適所を図ることが出来る。
社員は自分の能力を最大限に発揮できる現場を見つけ、プロフェッショナルを目指して成長していく。そのことが、スピーディーな組織運営を実現し、変化に対応出来る組織を創り上げていく。これこそが、東急モールズデベロップメントが目指す次のステージである。
- 設立
- 1978年
- 事業内容
- SC企画開発運営事業(サブリース・プロパティマネジメント事業)
- スタッフ数
- 184名 (2013年7月現在)
- 平均年齢
- 38歳 (2013年7月現在)
- 男女比
- 6:4 (2013年7月現在)